*2003*

汗をかいたからだで

凪いだ海に月を浮かべて、するするとよくすべる小舟に乗ろう。
漕ぐたびに揺れる村々のあかりを、手をつないで一緒に見よう。

みっつ夜を送って。
よっつ朝を迎えて。

さかなに食べ飽いたら、お互いでお互いをたいらげてしまおう。

いつか

湯浴み、上気した頬に
濡れ髪はりついて
恥ずかしそうに笑う君

薄明

僕らの見えない指先には、
細い月のような指輪がある
お経を唱えると縮んでしまうわけでなく
一つで全てを統べてしまう指輪でもなく
はずすことも
はめることも
僕らの意志に委ねられた、
誓約を意味する指輪がある

棕櫚の木

芳醇さを逸する
肥え太っていく
象徴は叩き落とされ
髑髏はにたにた笑う
夢のなかの夢が子供によって彩色され
そぼつく雨は影すら濡らせないだろう

ありえないことだ!
ありえないことだ!
僕に精子がないなんてことは

黄金色の饅頭

天国にいることを僕は知り
管理者である天使は言う。
「維持するためには、月々10万石必要です」

ああ、そんなことも知らなかったのか。

守られていた幸せを今更かみしめて
崩れ去るモルタルの壁に過去を見た。

ああ、そんなことも知らなかったのか。

天使に肉体があることも、
天国に維持費がいることも、
ここが天国だということも。
全ては己が掌のなかだったというのに。

僕はそんなことも知らなかった。

おおう、おおう

積み上げいてた小石
誰のものだったのか
落ちる、落ちる、落ちる

凛凛と鳴れ

手のひら、柔らかく包んだ蝶を
握りつぶしてしまわないように。

抱いて眠った、ひかり
朝、目が覚めたら忘れてるような

ここにある美しいものごとを
はかなく消えるまで覚えていようと思う。

胎受

沈黙、受容、種のはざま
黒く、暗く、幻想の回帰
故よ、理よ、鎌を見せよ

舌先に貼りつく楽を甘く飲み込み、
眼球に聴こえる至を苦く吐きたまえ

在ることすらまた穿つためだけに。

舌禍出づるかな
焔の切先と
盲の腐臭と
しなう指先でただ善く撃て

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