*2002*

楽土

理由を欲していたけれど、
芽がでるのを待つしかない

ただただ

何千何万の短冊と
色とりどりな祈り
染めあげられた神様に
ぎゅっと結んだ鉢巻き
ぐるり曼陀羅、彼岸花

脈々

体温が上がる
心臓が跳ねる
蜃気楼のように
魂が景色に映る
ゆらゆら
波が寄せては返す
うつせみ
僕らの還るところ

波紋

ひしゃげる
らせん、だえん
じかん、ちから
さまざまな色
はじけとんで
捻れてうねる
生まれる前の
ひとのかたち

髪結

格子戸の向こうで
ぼとり、
ぼとりと
椿の首が落ちる音

えいえんのふち

背中にはりついたリアルを自覚する
仲良くいきてゆく
神様に預ける荷物などなく、
自分をのみやかんなのように使って
汗をかいていきてゆく

曇天

さざ波ひいて
光るさくら貝
のこる爪あと

ダイナミズム

細胞が
ひとつ
死に絶えても、
ひとは死なない

くさり

手紙ひらくたび
匂うさくらを
散らさぬよう
あたためて孵す

古里

めがかわくくらい
ちからがぬける
これがげんじつだと
おなじかおした
にんげんがわらう

鈍重な頭をもたげ
生臭い息を吐き、
ここにいることを
けして忘れるなと
攣れわらう毒蛇。

そんな口は閉じてしまえ

頭頂部に
生えた蔓を
毟りとる。

翌朝、
大きなさやえんどう。

微笑

欝蒼とした森
うねり葉ずれ
ざわめき停滞
大樹に咲いた
白いひだりて

はりのうえ

早鐘のように
打つ心臓を
只しみじみと
咀嚼する。
知らず知らずに
ほほに笑み。

ひかげ

寝坊して
朝御飯も食べずに
靴紐を結んでいたら
階段からひっそり
おばあが呼ぶので
立ち止まった。

「あい、おだちん」

手のひらにのった
おはじきがぬくくて
誰に投げつけていいのか
分からなくて困った。

痛み

五体別れ別れ
散り散りになって
さようなら。
いつかまた
一緒に旅を
することも
あるでしょう。

いとしさ

かえるのかあさんは
こどものえがおが
みたかっただけなのに

ひまわり

流されてゆく
黄色い花の
名前は何ですか。

明後日をさして
わらわらと増える
指と指のあいまに
太陽の方向を
教えてください。

ひと

焼いてしまえば
骨しか残らないのに

月がまあるかった

坂のうえにある洋館の赤い自転車
来年小学生の女の子が
パパにおねだり、買ってもらった
赤い、赤い自転車
補助輪なくたって
友達支えてくれなくたって
あたし、ひとりで乗れるんだから

買い物帰りの大学生
今日も就職活動お疲れ様でした
缶ビールいっぽん、
つまみは鯖の缶詰
幸せ、幸せってなんだろう
考えるようで考えない夕方
えっちらおっちら
汗をかきかき坂をのぼる

風を切るように走る赤い自転車
買物袋かついで俯き歩く大学生

自転車に轢かれても
人は空を飛べるんだってふたりは知った

空にひっそりと月がまあるかった

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